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激変する司法書士業界の現状
司法書士を取り巻く環境は10年ほど前から大きく変化しています。司法書士の制度そのものも大きく変わりつつあります。
司法書士人口の量的、質的変化
司法書士人口の急増
平成5年~13年は年間50名ほどの増加だったものが、平成18年以降は毎年500名近い増加となっています。人口増加地域では配属研修先がない、就職先がないという形で合格者に影響を及ぼしていますし、パイの奪い合いによって開業しても食べられない司法書士の問題も出てきています。
地域による偏在
平成17年と平成22年における都道府県別の登録者総数の増減率を比較すると、「東京」「神奈川」「愛知」「千葉」といった大都市圏の増加率が高く、「徳島」「秋田」「岩手」といった大都市圏から離れている地方では減少傾向にあります。司法書士人口が減っている地域、そもそも司法書士や弁護士が存在しない市町村は全国に多数存在します。日本全国で活躍ができる国家資格である司法書士の資格者が司法サービスを求める国民の期待に応える必要性は高まっているといえるでしょう。
司法書士の高齢化と事業承継問題
平成17年時点の司法書士の年齢構成をみると、56歳~61歳の層が最も多く、また、51歳以上の方を合計すると全体の61%と高齢化が進んでいます。今後は世代交代が急速に進み、事務所の事業承継問題が多く起こってくるでしょう。
※さらに詳しく知りたい方はこちらへ 司法書士人口の増加
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独占業務の相互乗り入れ・職域の拡大
周辺士業との関係
(1)弁護士との関係
弁護士人口が司法書士以上に急増しています。司法書士人口を既に1万人以上、上回っています。
弁護士とは、主に個人を対象としたサービス(訴訟、相続など)で競合する可能性があります。しかし、それぞれに得意分野は異なりますので、お互いにこれまでの独占業務にこだわることなく、柔軟な対応をしていくことが求められています。
※司法書士・弁護士の会員数についての詳細はこちらへ 「会員数」から見る司法書士
(2)行政書士との関係
商業登記の分野で行政書士との間で職域上の軋轢があるようです。しかし、司法書士には会社法や商業登記法のアドバンテージがあるわけですから、そこを深めるともに、その周辺法令も身につけ、より付加価値のあるレベルの高い勝負に持ち込んでいきたいですね
(3)資格制度も変わります
司法書士に依頼した債務整理の案件が簡易裁判所から地方裁判所へ控訴となると、クライアントは弁護士へ依頼をし直さなければなりません。また、会社を設立したい場合も、設立書類は行政書士に、登記は司法書士に頼まなければならないというのが現在の制度です。このようなユーザー側にとって非常に面倒でわかりづらいシステムがいつまで続くでしょうか。
「国民が安心して生活するために、この制度はどうあるべきか」、独占業務を許されている資格者こそがこれから考えていかなければならない問題でしょう。
専門領域の拡大
登記中心であった司法書士の職域に、簡易裁判所の代理権が加わりました。また、司法書士による成年後見への取り組みも社会的認知が進んでいます。専門領域の拡大は、司法書士のビジネスモデルにも変化をもたらしています。
法人化の影響
個人に限定されていた司法書士の事務所形態は、平成15年4月から法人化することが可能となりました。
司法書士法人と従来型の個人事務所を比較してみると制度面だけでもいろいろな違いがあります。それぞれの特色を理解して、自分のキャリアパスを考える必要があります。
【制度面】 | 個人事務所 | 司法書士法人 |
---|---|---|
継続性 | 承継が必要 | 永続できる |
拠点展開 | 不可 | 可能 |
規模の拡大 | 限界がある | 無限に拡大可能 |
意思決定 | 迅速(所長だけで決定) | 社員間での合意が必要 |
責任の範囲 | 自身の行為についてのみ | 無限連帯責任 |

広告の自由化、報酬の自由化
インターネットの普及と広告規制の緩和
以前は、ほぼ許されていなかった広告が現在は可能となり、インターネットの普及とあいまってダイレクトにエンドユーザーに対して情報発信することができるようになりました。司法書士もにとってもお客さまから選ばれるためには「ユーザーのニーズにあったサービスを開発すること」と「開発したサービスをしっかりと発信すること」が必要不可欠となってきました。
報酬の自由化
報酬も規制緩和により、現在では司法書士各人が自由に設定できるようになりました。その結果、「付加価値の低い仕事は価格競争にみまわれます」し、一方で「付加価値をつけた商品開発が可能」となりました。
法律改正・制度改正、社会環境の急激な変化
高度経済成長がバブル崩壊とともに去り、日本社会・経済に潜在的に存在していた問題が噴出してきました。司法書士も他の士業の方も、時代の変化とそれにともなうお客さまのニーズの変化を汲み取ったサービスを開発していくことが求められています。
少子高齢化
絶対人口が減少し、生産活動を行う世代は減少し支えられる世代は増加します。そうなりますと、人口増加の下での高度経済成長を謳歌していた時代とは異なる新たな社会システムの構築が必要となります。社会保障制度の見直し、地方と中央との役割の見直しは必須であり、社会システムの再構築が行われるでしょう。
グローバル化の進展と国際社会における日本のポジションの低下
グローバルスタンダードの波のなかで、ISO、会計基準、個人情報保護、内部統制など日本も今までの国内の基準を大幅に見直すことを迫られています。
また平成22年、GDP(国内総生産)は中国が日本を抜いて世界第2位となりました。近年、その他(ロシア・インド・ブラジルなど)の新興経済国の台頭がめざましく、国際社会のパワーバ ランスも大きく変わりつつあります。
コンプライアンス社会の到来
良いか悪いかは別にして、現在の日本は法令の遵守が今までよりも一層強く求められるようになり、契約社会に近づいているように思えます。
他方、日本の法律が従来の「事前規制」から「事後取り締まり」へ舵を切っているという側面も見過ごすことはできません。
このような社会では専門家のオピニオンが重要になってきます。司法書士も得意とする不動産や会社法の分野でこれらの役割の一端を担うチャンスが出てくるのではないでしょうか。